予防と原因治療

あなたが歯科を受診されるきっかけは、歯が痛い、歯茎などが腫れて痛い、歯を失って咬めないなどお困りの問題が生じた場合でしょうか?
もしかすると、あなたがそのようにお困りになる前から、あなたの歯や歯の周りの組織や顎関節などは困って悲鳴をあげていたかもしれません。

問題が生じるのには、必ず原因があります。原因を無視した単なる対症療法や修理型治療では、本当の問題の解決にはならないと考えています。考慮しなければならないのは主に、細菌の関与と力の関与の二つの要素です。

お口の中の問題である以上は、この二つは複合して起こってきます。

虫歯や歯周病は、外来の菌やウィルスによる感染とは違い、お口の中で生態系を作っている常在菌(からだに必要で常に粘膜のある場所に住んでいる細菌)によるものです。ですから患者さまご自身の生活習慣によって、お口の中の環境を整えることがとても重要になります。

力の要素は咬み合わせです。咬み合わせに不正があると、それが例え一本の歯であろうと顎の位置が適応して簡単に変化します。咬み合わせが、解剖的に調和が取れていなかったり、食べたり、飲み込んだり、発音、呼吸、姿勢、睡眠時の歯ぎしりなどの顎のさまざまな機能と調和が取れていないと、歯や歯周組織や顎関節などにダメージを与えてしまいます。
特に睡眠時の歯ぎしりは、皆さんご自覚はないですけれど、とても強力で、同時に身体の生理に実はとても重要な役割を果たしています。睡眠時の歯ぎしりにも調和した咬み合わせであることは、歯を守るためにとても重要なことなのです。

お口の中の環境は、成長発育、成熟化、老齢化の長い加齢のスパンで、常に適応しながら変化していき、適応しきれなくなるといよいよ疾患となります。ですから歯科診療は、決して一過性の特別なものではなく、加齢を通して、快適な生活のために常に関わっていく分野なのです。痛いとか咬めないといったことだけで受診し、単にそこを修理して終わりという治療を繰り返すような分野ではないのです。

予防や原因治療には、個々に応じたいわばオーダーメイドの診療が必要なので、診査・診断が重要になります。原因を考慮した治療と予防によって、真に歯を大切にしていただきたいと思います。